空き家ごと国へ返せる?相続土地国庫帰属制度は建物があると申請できない

那覇市に広がる沖縄の住宅街

相続した沖縄の空き家を使う予定がない。土地も建物も、そのまま国へ返せるのでしょうか。

結論は、建物がある土地は原則として相続土地国庫帰属制度へ申請できません。未登記の家でも、現地に建物が存在すれば同じです。

ただし、制度を使うためだけに先に解体するのは早計です。解体後も、境界や担保権、地中の基礎・浄化槽など別の要件で承認されない可能性があるためです。

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「空き家ごと国へ」はできません

相続土地国庫帰属制度は、相続や一定の遺贈で取得した土地を、要件を満たす場合に国庫へ帰属させる制度です。空き家を国が引き取る制度ではありません。

法務省は、建物がある土地を申請段階の却下事由としています。ここでいう建物は、登記の有無だけで決まりません。屋根や周壁などがあり、土地に定着し、用途に使える状態かを個別に見ます。小さな物置は建物に当たらない場合がありますが、自己判断せず申請先の法務局へ確認します。

法務省が2026年7月16日に公表した速報では、同年6月30日までの申請は5,698件です。却下された事案のうち、建物の存する土地に該当したものも4件ありました。「古い家だから建物として見ない」とは限りません。

相続土地国庫帰属制度で建物がある土地は申請できず、解体後も他の要件確認が必要なことを示す図
建物をなくせば自動的に承認される制度ではありません。

解体前に見るのは、土地だけで審査を通せるかです

建物を取り壊した後も、土地には申請できない条件と、承認を受けられない条件があります。

たとえば抵当権や賃借権などが設定されている土地、他人の通路として使われる土地、境界や所有権の範囲に争いがある土地は、申請段階で問題になります。

さらに、管理に過分な費用や労力がかかる崖、地上の工作物、地下の建物基礎・コンクリート片・古い水道管・浄化槽・井戸なども審査対象です。沖縄のRC住宅を解体するときは、地上部を撤去しただけで地下に何も残らないとは限りません。

先に、登記事項、公図や地積測量図、現地の境界、担保権、通路利用、地中物の可能性を整理します。その結果を法務局の事前相談へ持ち込んでから、解体するかを判断します。

申請には解体費とは別の費用があります

審査手数料は一筆につき14,000円で、取り下げや却下、不承認でも返還されません。承認後は、国の10年分の標準的な管理費用を考慮した負担金も必要です。

負担金は基本20万円ですが、土地の種目、区域、面積によって計算が変わる場合があります。承認を受けた場合は、負担金の通知を受けた日の翌日から30日以内に納めます。

つまり、国庫帰属を選ぶ費用は「解体費だけ」ではありません。測量や境界整理が必要になれば、その費用と期間も加わります。

相続空き家を建物付きで売る、解体して土地を売る、解体後に国庫帰属を申請する三つの出口を比較する図
解体を決める前に、建物付き売却・更地売却・国庫帰属を同じ表で比べます。

先に比較するのは3つの出口です

建物付きのまま売る

老朽化や残置物があっても、土地需要や再利用の見込みによっては現況のまま売却・買取できる場合があります。沖縄では地価が上昇している地域もあり、全国一律の値下がり前提では判断できません。

解体して土地として売る

道路条件や用途地域、再建築の可否を確認し、解体後の土地として市場に出す方法です。解体補助金を検討する場合も、交付決定前の契約を認めない自治体制度があるため、順番を確認します。那覇市の制度は、解体補助金の契約順で整理しています。

解体後に国庫帰属を申請する

売却や利用が難しく、土地が制度要件を満たせる見込みがあるときの選択肢です。建物滅失登記は所有者が行うのが原則で、解体後の現況と登記もそろえます。

国庫帰属を考えたら、解体見積もりより先に出口を並べます

相続土地国庫帰属制度は有力な選択肢ですが、空き家をそのまま引き取ってもらう制度ではありません。

沖縄空き家買取センターでは、建物の状態、土地の道路・境界、売却可能性、解体後の費用を並べ、国庫帰属の相談前に比較する材料を整理できます。制度の申請判断は、法務局や司法書士などの専門家へ確認します。

空き家を解体する前に3つの出口を相談する


参考資料
法務省「相続土地国庫帰属制度の統計」
法務省「相続土地国庫帰属制度の概要」
法務省「相続土地国庫帰属制度に関するQ&A」
法務省「相続土地国庫帰属制度の相談対応について」

この記事を書いた人

田端 宰のアバター 田端 宰 まぶい不動産 代表

まぶい不動産代表|空き家の専門家
5年間、法律事務所の相続分野での経験をもとに、「住まいの再出発」をサポート。沖縄の相続によって空き家になってしまった不動産を中心に、他社が敬遠する困難な現場の原状回復における責任者を務める。現場で培った知見をもとに、空き家に関する法的な注意点について解説。不動産価値の毀損を最小限に抑える独自のサービスを展開。特殊清掃から、空き家の売却活動まで一気通貫したサポートを行なっている。

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